灰色の北壁/真保 裕一

山岳ミステリー3編です。


  • 灰色の北壁 (講談社文庫)image
  • 黒部の羆
  • 灰色の北壁
  • 雪の慰霊碑

3編ともに人間のドロドロした部分が描かれているのですが、山では正直に生きることが出来る山男達の話です。ミステリー短編というカテゴリには、勿体ないほどのスケールの大きさは作者の筆力といったところでしょうか。作者は、実際には山の経験がないらしいのですが、これほど臨場感溢れる描写は素晴らしいと思いました。

それぞれ、「そこに山があるから」山に登るわけではなく、名誉欲や嫉妬、果ては女がらみという不純な動機で山に向かうのです。社会の中で普通に感じるその不純な動機が、雄大で猛々しい自然の中で氷解していく、俗世のリアリズムと山の神秘性が、うまいこと対をなしていて面白いのです。3編通じて山男のダンディズムを感じることが出来る作品です。

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2008年06月17日 (火) at 09:41



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