隠蔽捜査/今野 敏

エリートキャリア警察官僚小説。


隠蔽捜査 (新潮文庫)image

1995年3月30日に起きた国松警察庁長官狙撃事件で、小杉巡査部長の自白を情報操作していた事実を下敷きにしたストーリーです。登場する長官官房の総務課長というエリート官僚が物凄い性格。組織のためには個人の考えはおろか、家庭をも犠牲にしなければならない。常に正確な情報を求め、的確な判断を下さなければエリートではない。有名私立大学の入試に受かった息子を、東大以外は認めないと浪人させる徹底した信念を持つ。なんて嫌な奴...。

ところが読み進んでいくうちに、とても魅力的で親近感を感じてしまうキャラだったりするのです。いじめられっ子だったエリート官僚が職場で、そのいじめっ子と仕事をしなきゃいけないなんて...。このタイプの人間としては、自分の理論に逃避するのではないかとも思うのですが、常にエリートとして臣民のために行動するのには、あっぱれです。息子の麻薬使用に対して揺れる心情も同感できます。こいつ、いいヤツじゃん。

魑魅魍魎暗躍する官僚社会に自分の信念をもって立ち向かう。こんな官僚ばかりだったら、日本も少しは良くなるだろうに。

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2008年06月26日 (木) at 17:19



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