血と暴力の国/コーマック・マッカーシー

コーエン兄弟の映画「ノーカントリー」の原作です。


血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)image

マフィアの麻薬取引での殺し合いに遭遇した普通の市民だったモスが、屠殺に使う圧縮空気銃を武器に使う殺し屋シュガーに追われる事になってしまう。ただ金を持ち逃げしてしまえば良いものを瀕死のメキシコ人に水を飲ませに戻ってしまう程のお人好し。そんな事しなきゃ巻き込まれないのにねぇ。

純粋な殺人のみを行うシュガーは、まさに悪の権化で、それを追う保安官は善を象徴するのですが、中盤までのクライムノベルから一転、哲学的な主題になってくるのです。保安官の独白で、わけが分からなくなってきます。善は悪に呑み込まれる運命にあるのか?人生の選択とは?

シュガーの投げるコイン表裏と同じように、善悪、生死は表裏一体であるという哲学的な命題と、突然に殺されていく人間達をただひたすら描く文体には奇妙な透明感がありますね。カギカッコの無い会話部分も効果的です。映画も観てみようと思います。

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2008年10月09日 (木) at 12:03



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