ミノタウロス/佐藤 亜紀

外国モノのような雰囲気の日本文学。


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1920年代ソビエト連邦誕生前夜のウクライナ地方が舞台。革命と戦争の混沌の中、地主の子供として何不自由なく育った主人公が、無法地帯を生き抜くために、暴力と略奪、非道の限りを尽くすアナーキーな冒険小説です。中盤以降のロシアの白軍、赤軍、強盗集団、ならず者、入り乱れての抗争の描写はスピーディーな文章で、息をもつかせぬ展開です。この広大な舞台で20年たらずの人生を主人公の一人称で語ってみせる構成で人間の生死をリアルに描いていて、その美しさの描写は、とても映像的で、腑抜けな主人公に、全く感情移入できないのに、引き込まれてしまうという不思議な感覚を味わいました。

カギカッコが一切ないし、暴力と人間の業の本質をテーマに置いているという事で、コーマック・マッカーシーのパクリか?とも思われますがね...。そんな文体で翻訳物かと勘違いしてしまうほどでした。一切の救いもない悲劇的な結末も、淡々とした描写でなかなか独特で良いんじゃないかなと思いました。

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2009年01月12日 (月) at 11:29



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