利休にたずねよ/山本 兼一

第140回直木賞受賞作。


利休にたずねよimage

いきなり、秀吉に切腹させられる場面から始まります。え!?って思うんですけど、何故そんな事になったのか、利久の追い求める「美」とは何か、時代を遡って描いていく手法。上手いですねぇ。歴史上の出来事なので読者は結末を知っているので、逆に、この構成は引き込まれます。

一言謝って頭を下げれば許されるのに、頑として自分の美意識を譲らない利久の男気と、言いがかりを付けて仕返ししようとする天下人秀吉の傲慢さ。かつては、茶の湯を使って秀吉を強力に押して、天下を取らせた利久の、現代風なら上司と部下の喧嘩話なのです。なんとも人間くさい物語として描かれていて楽しめました。家康、細川忠興、古渓宗陳などは、何とかして助けようとするのですが、本人が譲らない頑固さが可笑しい。茶道と言えば心を落ち着かせて無心で侘寂を求める印象なのですが、なんと熱い激情を抱いていた人間なのでしょう。そして、利久の「美」を追究する信念には、生と死が深く関わっているのでした。

寂の中に艶を求め、色に満ち、釜煮えたぎるような情。こんな生き方も、カッコイイね。モテモテだし(笑)。

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2009年03月25日 (水) at 13:11



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