われらが歌う時(上・下)/リチャード・パワーズ

われらが歌う時 上image

われらが歌う時 下image

これもTBSラジオ「ストリーム」の書評で読んでみたくなった大作。分厚い上下巻だけど正月休みだからね。

亡命ユダヤ人物理学者と黒人歌手の間に生まれた3人の子供の話。人種差別の激しい1930年代の米国の歴史的コンサートで出会ったユダヤ人と黒人の夫婦物語と1950年代の子供達の物語が交錯して、時空の螺旋となって絡みあって描かれていきます。音楽を拠り所にしつつも、反面、音楽によって引き裂かれる家族の絆はとても悲しい物語。しかし音楽こそ人種問題、貧困社会問題、果ては物理学的時間の秘密をも解き明かす鍵になる訳です。

天才声楽家の兄、伴奏ピアニストの弟、音楽的な才能に恵まれながらも黒人解放活動家となってゆく妹。クラッシックからジャズ、ヒップホップまで、まるでバックグラウンドに流れているかのように物語に盛り込まれていて音楽好きにはたまらない上下巻です。

未だに人種問題は変わっていないのだろうけれど、革新的な黒人大統領の誕生とともに、この本を読むと、美しい音楽とともに希望が湧き上がってきます。