告白/湊 かなえ

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)image

デビュー作でありながら、「週刊文春ミステリーベスト10」1位、本屋大賞1位を受賞したベストセラーの文庫化。6月5日には中島哲也監督作品として、全国東宝系でロードショー決定!

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もうね。何度も読むのを、やめようかと思うくらい悲しい物語で、全てが悪い方に転んでいくミステリー。終業式のホームルームで「私の娘はこのクラスの生徒に殺されました」なんていう衝撃の女教師の告白から始まり、事件に関係する人達の告白で明らかになっていくストーリー展開で、どいつもこいつも、自分勝手で最低なヤツなのですが、これが人間の腹の中なのだよ。と思ってしまう自分が、また、悲しい…。

少年犯罪、いじめ、引きこもり、差別、と、この世の社会問題と呼ばれる事象を、これでもか!と盛り込んだ状態で、息が詰まってきます。これが現実なのだ。そして、何の救いもないのだ。と、バッサリ切られた感じで…。

6月に映画公開(公式サイト)されるそうですが、是非観に行きたいと思っています。

荒野へ/ジョン・クラカワー

荒野へ (集英社文庫)image

DVD 「Into The Wild」の原作という事で、映画を観てから読んでみました。ノンフィクションとして主人公の行動を関わった人々に対する取材から内面までをも浮かび上がらせる筆力は、素晴らしいジャーナリスト魂だと感心しました。

亡くなっている人間なので本当の所は分からない訳ですが、著者の冒険体験を重ね合わせて、厳しい自然に立ち向かう、くだりは、大変感動的でした。青年の純粋な精神論と自由への渇望は映画でも心を打たれましたが、単に無謀で危険な旅では無かったと言うことが分かって、映画のストーリーを補完する事が出来ました。特にエンディングの真実(想像でしかないのですが)は、映画ではモヤモヤ感を抱いていただけに、著者の主人公の若者に対する尊敬の念さえも感じられて、この物語に対する理解が深まりました。

不思議なバスを訪れた両親を描く場面は落涙必死。彼は真の自由を手に入れ、彼の家族も真の愛を取り戻した瞬間が心に刺さります。

東京島/桐野 夏生

東京島image

アナタハン島事件が元ネタだとストリームのポッドキャストでも触れられていたと思いますが、無人島サバイバルものとしては映画もありますし、よくある設定。

アナタハン – Wikipedia
太平洋戦争末期に太平洋アナタハン島で起こった実話をもとにした1953年公開の日本映画。監督はハリウッドの名匠ジョセフ・フォン・スタンバーグだが、スタンバーグ自身の意向により、日米合作ではなく日本映画として製作された。

無人島に女1人。生き残るために女性という立場を武器に男を手玉にとり、殺し合いを繰り広げさせる。人間というのは権力と富をどんな場所でも追い求めてしまう哀れな生き物なのだなと。しかし、ますます女って怖いっす。桐野 夏生のパターンを想像すると、もっと悲惨な話に進むかと思われ…。OUTとかね。と思っていたら、結構な軟着陸に成功していたのでホッとしました。

鬼の跫音/道尾 秀介

鬼の跫音image

  • 鈴虫
  • 犭(ケモノ)
  • よいぎつね
  • 箱詰めの文字
  • 冬の鬼
  • 悪意の顔

こわーいミステリーというかホラー短編集。怖いっ!けど気になる…と、あっと言う間に読み進めてしまいました。

独立した短編ですが通して登場する S という人物が、それぞれの物語を奇妙に繋げていて不気味な雰囲気を醸し出しています。人間の心の愛憎と欲望に棲む魑魅魍魎の跫音が僕にも聞こえてくるようで、読むのを何度も止めようかと思いました。書体も不気味…。

悪意と憎しみというブラックなテーマだけでなく、恋人との日記を遡る「悪意の顔」なんて愛情をテーマにしていたりします。日本昔話の伝統芸を感じました。昔話ってリアルに考えるとホラーばかりですものね。