〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇/町山 智浩

〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)image

映画の見方がわかる本」の続編で「ブレードランナーの未来世紀」と題して80年代米国映画を解説していきます。いきなり、デヴィッド・クローネンバーグの「ビデオ・ドロームimage」からカルト映画炸裂しています。これ観ていないんですが辛抱ならん。観たい!人気作として「グレムリンimage」「ターミネーターimage」がきて、映画裏話がとても面白いです。テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジルimage」は…うう…観たい。「プラトーンimage」の両手を挙げて跪くモノマネをよくやっていたなーと「ロボコップimage」のモノマネも流行ったのを思い出しました。いまだにコロッケさんのロボット五木として鉄板ネタですがね。そんな人気作のヴァーホーヴェン監督は、狂気に満ちた映画人だったのかー。ビックリです。と、おおとりで「ブレードランナーimage」の「4つくれ」「2つで充分ですよ」の謎もスッキリ!ポストモダンの勉強にもなりました。

ブルーベルベットimage」も、まだ観ていないなぁ。まだまだ修行中です。

映画の見方がわかる本/町山 智浩

映画の見方がわかる本—『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION)image

時計じかけのオレンジimage」のアレックスが薄ら笑いの表紙が怖いです。「2001年宇宙の旅image」から「未知との遭遇image」までと題して映画秘宝に連載されていた映画の見方指南本です。好きな映画は?と聞かれて「2001年宇宙の旅」と答える「パレード」の登場人物の大学生みたいな人達って意外と多いのでは?ホントは意味不明なのだがコレは名作だ!なんてイメージ先行で、ちょっと気取ってインテリ風を装って痛い目に会わないようにしていただきたいものです。

そんな名作だけど、ちょっと難解な映画を解きほぐしてくれるのが、この本。監督のインタビュー、制作現場などのリサーチから、なんで、こんなに人の心を掴む映画が出来たのかが、映画の本場から解説されています。

映画こぼれ話的なエピソードも満載です。「イージーライダーimage」や「タクシードライバーimage」の本質とは何か?もう一度観直してみたくなりました。てか、先週は「ダーティハリーimage」連続鑑賞地獄に陥りました(笑)。

ルームメイト/今邑 彩

ルームメイト (中公文庫)image

多重人格者ミステリーサスペンスです。ルームメイトの失踪から事件は次々に殺人事件が起きるテレビ的な展開。主人公の女の子も、かなり行動的で突き進む姿に違和感を覚えつつ、読者は、すでに中盤で犯人に目星が付いてしまうわけなので、興味の持続を促す上で、もっと陰とした、ジメッとした、人間くさい人物の描き込みが欲しかったかな。

発端がルームメイトの失踪で1人の体に共存する人格たちもルームメイトとして表現されていますが、御都合主義的に発現する、それぞれの人格が、ありきたりで、飽きがくるのも正直なところの感想。全ての事象が多重人格で説明できてしまうのって、なんでもありのスーパーマン的な前提になってしまうから…ちょっとキビシイかな。封印されたモノローグに出現する第三人格の発現理由が全く説明できない所に、この多重人格という設定を乱用しすぎた結末となってしまいました。医学的に、どうこうという事は分かりませんがね。

ブンとフン/井上ひさし

ブンとフン (新潮文庫)image

井上ひさしさんが、先月亡くなったので思い出したように読んでみました。初めて読んだのは小学校の頃だったかな。もう記憶の彼方で忘れていました。全共闘っぽいシュプレヒコールや言い回しが古い所もありますけど、この歳になってから改めて読んでみても、大笑いです。このバカバカしさは、清々しいですよ。思わずサイザーンス サイザンス!と唄ってしまいます。

児童文学として書かれているにも関わらず「常識を疑え!」というアナーキーな思想とナンセンスを根底に据えて、滅茶苦茶な世界観を繰り広げる自由な発想は、現代社会の閉塞感を打ち破るに足るパワーを持ち続けている所に驚愕するわけです。アリス・イン・ワンダーランドのルイス・キャロルなどと比較されるのですが、世界に対する攻撃性と愛情は、断然上です。

のりしろや、切り取り線が書いてある小説なんて見たことないでしょ。そんなエンターテイメントとしての児童文学者(放送作家)という立ち位置も忘れずに、しっかり楽しませてくれる優しさも、氏の人柄を感じさせて、惜しい人を亡くしたものだと、痛感する次第です。

毎日、恐竜図鑑を広げ新聞広告の裏に緻密な模写を日課としている甥っ子に「たまには文字も読んでみろ」と、この本を薦めてみようかしら。