われらが歌う時(上・下)/リチャード・パワーズ

われらが歌う時 上image

われらが歌う時 下image

これもTBSラジオ「ストリーム」の書評で読んでみたくなった大作。分厚い上下巻だけど正月休みだからね。

亡命ユダヤ人物理学者と黒人歌手の間に生まれた3人の子供の話。人種差別の激しい1930年代の米国の歴史的コンサートで出会ったユダヤ人と黒人の夫婦物語と1950年代の子供達の物語が交錯して、時空の螺旋となって絡みあって描かれていきます。音楽を拠り所にしつつも、反面、音楽によって引き裂かれる家族の絆はとても悲しい物語。しかし音楽こそ人種問題、貧困社会問題、果ては物理学的時間の秘密をも解き明かす鍵になる訳です。

天才声楽家の兄、伴奏ピアニストの弟、音楽的な才能に恵まれながらも黒人解放活動家となってゆく妹。クラッシックからジャズ、ヒップホップまで、まるでバックグラウンドに流れているかのように物語に盛り込まれていて音楽好きにはたまらない上下巻です。

未だに人種問題は変わっていないのだろうけれど、革新的な黒人大統領の誕生とともに、この本を読むと、美しい音楽とともに希望が湧き上がってきます。

田村はまだか/朝倉 かすみ

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お正月休みに未読本を消化しています。

どこかの書評で紹介されていて読んでみた本です。舞台は札幌すすきのにあるバーで同級会3次会。40歳の男女+マスターの人間模様。雪で飛行機と電車が遅れて、同級会に間に合わなかった田村という同級生を、ひたすら待っているだけの話。田村という人物を同級生の口から様々なエピソードで語られる訳ですが、とーってもいいヤツなんだ。小学六年生にして男の中の男というか、人生を達観しているすごいヤツ。読者も田村を恋い焦がれて待つわけです。「田村はまだか」と。

家庭のあるヤツ、離婚したヤツ、不倫に巻き込まれてダメなヤツ、そして未だ独身貴族、と、それぞれの人生を田村に絡めて語られるわけですが、まぁ人間40歳を超えてもアホだなぁと。でも君の気持ちは痛いほど分かるよ。と思ってしまうのは僕も同年代だから。田村に興味津々のマスターも場末のバーの雰囲気で良い味出している。結局田村を待っている一夜なわけですから田村は登場しないのですが、最後の最後で会えるのです。かなり衝撃的な出会いなのですが、これがまたカッコイイんだなぁ。「田村はおれだが?」