プレシャス

109シネマズMM横浜で観てきました。平日にも関わらず上映館数が少ないからなのか、こんな暗い映画なのに客席は2/3程埋まっていて、結構入っていました。

サファイア原作「プッシュimage」の映画化。代替学校で働いていた作者の実体験を元に書かれた小説で、1987年のハーレムを舞台にしたお話です。16歳の黒人少女プレシャスは、生活保護を受ける貧困層母子家庭で育ち、読み書きができず、父親にレイプされダウン症の子供を産み、さらに二人目の子どもを妊娠中、嫉妬する母親からは執拗に虐待され、自分が肥満であることに強いコンプレックスをもっている、という究極に悲惨な主人公です。米国の貧困層ってジャンクフードしか食えないから肥満なんですよね。

日本でも生活保護の不正請求など、問題になってきていますが、この母親も一日中テレビを観ているだけで何もしないで生活保護を貰っている輩で、プレシャスに学校行くよりも役場で手続きしてこい!メシ作れ!みたいな、ろくでもない母親です。何故こうまでして娘を虐待するのかというのは、自分の旦那を取られたと強い嫉妬を持っているという異常な親子関係で、観ていて嫌になってくるわけです。バシバシ殴られても、灰皿投げつけられても、果てはレイプされても、我慢しているのですが、受け入れがたい辛さが極限にまで達すると、場面が、ガラッとフラッシュバックして空想の世界へ。そこは、スターになった自分の世界。スポットライトを浴び、イケメンがエスコートしてくれる、煌びやかな夢の世界。パッと目が覚めると、虐待されている自分…。現実逃避で意識を飛ばして耐えるというこの上なく可哀想な技を身につけているのですが、この場面の光と闇のコントラストは痛烈でした。

仕舞いには赤ん坊共々テレビを投げつけられて追い出されるというメチャクチャな展開なのですが、代替学校で出会った先生に助けられて自我を確立し成長する物語で教育の大切さに心底頷かされました。読み書きそろばんは基本です。といっても、勉強して貧困から抜け出せて良かった良かったという話で終わらないのが、普通じゃないところ。

監督はリー・ダニエルズといって元々 MTV などミュージックビデオを撮っていた監督で、流石にスター夢の世界の演出はバッチリ。ソーシャルワーカー役のマライア・キャリー、看護士役にレニー・クラヴィッツ、と、お友達スターをノーギャラで使っていたというのもスゴイし、そしてゲイ。プレシャスを導く女性教師もレズの設定だったしね。殆ど唯一といえる男性出演者のレニー・クラヴィッツの立ち位置が、この時代としては珍しい看護士でイケメンて事で、よく判らなかったのですが、この暗い話の中で、ちょっとした恋心って色ですか?でも結局女好きで玉砕。貧困、教育、同性愛、HIV などの偏見も時代背景としてよく出ていたし、大団円ではないにしろ、むしろ現在の米国の奮起を描く映画ではないでしょうか。人生賛歌などではなく、逆に強烈な絶望感を味わう映画なので心して観た方が良いと思いますよ。

鬼母役のコメディアンのモニークは、まさに鬼気迫る演技ですが、プレシャス役の新人女優ガボリー・シディベは、このために生まれてきたかのようなハマリ具合。マライア・キャリーの髪の毛ばさばさスッピンおばさんは、歳くったなーとビックリですが、とても上品で、おキレイでした。

公式サイト

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