ブンとフン/井上ひさし

ブンとフン (新潮文庫)image

井上ひさしさんが、先月亡くなったので思い出したように読んでみました。初めて読んだのは小学校の頃だったかな。もう記憶の彼方で忘れていました。全共闘っぽいシュプレヒコールや言い回しが古い所もありますけど、この歳になってから改めて読んでみても、大笑いです。このバカバカしさは、清々しいですよ。思わずサイザーンス サイザンス!と唄ってしまいます。

児童文学として書かれているにも関わらず「常識を疑え!」というアナーキーな思想とナンセンスを根底に据えて、滅茶苦茶な世界観を繰り広げる自由な発想は、現代社会の閉塞感を打ち破るに足るパワーを持ち続けている所に驚愕するわけです。アリス・イン・ワンダーランドのルイス・キャロルなどと比較されるのですが、世界に対する攻撃性と愛情は、断然上です。

のりしろや、切り取り線が書いてある小説なんて見たことないでしょ。そんなエンターテイメントとしての児童文学者(放送作家)という立ち位置も忘れずに、しっかり楽しませてくれる優しさも、氏の人柄を感じさせて、惜しい人を亡くしたものだと、痛感する次第です。

毎日、恐竜図鑑を広げ新聞広告の裏に緻密な模写を日課としている甥っ子に「たまには文字も読んでみろ」と、この本を薦めてみようかしら。

プレシャス

109シネマズMM横浜で観てきました。平日にも関わらず上映館数が少ないからなのか、こんな暗い映画なのに客席は2/3程埋まっていて、結構入っていました。

サファイア原作「プッシュimage」の映画化。代替学校で働いていた作者の実体験を元に書かれた小説で、1987年のハーレムを舞台にしたお話です。16歳の黒人少女プレシャスは、生活保護を受ける貧困層母子家庭で育ち、読み書きができず、父親にレイプされダウン症の子供を産み、さらに二人目の子どもを妊娠中、嫉妬する母親からは執拗に虐待され、自分が肥満であることに強いコンプレックスをもっている、という究極に悲惨な主人公です。米国の貧困層ってジャンクフードしか食えないから肥満なんですよね。

日本でも生活保護の不正請求など、問題になってきていますが、この母親も一日中テレビを観ているだけで何もしないで生活保護を貰っている輩で、プレシャスに学校行くよりも役場で手続きしてこい!メシ作れ!みたいな、ろくでもない母親です。何故こうまでして娘を虐待するのかというのは、自分の旦那を取られたと強い嫉妬を持っているという異常な親子関係で、観ていて嫌になってくるわけです。バシバシ殴られても、灰皿投げつけられても、果てはレイプされても、我慢しているのですが、受け入れがたい辛さが極限にまで達すると、場面が、ガラッとフラッシュバックして空想の世界へ。そこは、スターになった自分の世界。スポットライトを浴び、イケメンがエスコートしてくれる、煌びやかな夢の世界。パッと目が覚めると、虐待されている自分…。現実逃避で意識を飛ばして耐えるというこの上なく可哀想な技を身につけているのですが、この場面の光と闇のコントラストは痛烈でした。

仕舞いには赤ん坊共々テレビを投げつけられて追い出されるというメチャクチャな展開なのですが、代替学校で出会った先生に助けられて自我を確立し成長する物語で教育の大切さに心底頷かされました。読み書きそろばんは基本です。といっても、勉強して貧困から抜け出せて良かった良かったという話で終わらないのが、普通じゃないところ。

監督はリー・ダニエルズといって元々 MTV などミュージックビデオを撮っていた監督で、流石にスター夢の世界の演出はバッチリ。ソーシャルワーカー役のマライア・キャリー、看護士役にレニー・クラヴィッツ、と、お友達スターをノーギャラで使っていたというのもスゴイし、そしてゲイ。プレシャスを導く女性教師もレズの設定だったしね。殆ど唯一といえる男性出演者のレニー・クラヴィッツの立ち位置が、この時代としては珍しい看護士でイケメンて事で、よく判らなかったのですが、この暗い話の中で、ちょっとした恋心って色ですか?でも結局女好きで玉砕。貧困、教育、同性愛、HIV などの偏見も時代背景としてよく出ていたし、大団円ではないにしろ、むしろ現在の米国の奮起を描く映画ではないでしょうか。人生賛歌などではなく、逆に強烈な絶望感を味わう映画なので心して観た方が良いと思いますよ。

鬼母役のコメディアンのモニークは、まさに鬼気迫る演技ですが、プレシャス役の新人女優ガボリー・シディベは、このために生まれてきたかのようなハマリ具合。マライア・キャリーの髪の毛ばさばさスッピンおばさんは、歳くったなーとビックリですが、とても上品で、おキレイでした。

公式サイト

プレシャス [DVD]image

プレシャス(字幕版)

宇都宮でした。

湘南新宿ラインで行ってみました。自動車か新幹線でしか行ったことが無かったのですが、横浜から乗り換え無しの一本で宇都宮まで行けるとは世の中変わってきているのだなーと。と云っても片道2時間オーバーの長旅でした。5年前に一度来たときは車で来たなぁと、会場に着いて思い出しました。

会場のホテル東日本に入って、昼飯に近くのラーメン屋で、とりあえずラーメンと餃子。「おぎの」って店でしたが、ココはチャンポンが一番人気だったのかと、帰って来てから後悔。次までには覚えておこう。ラーメン500円餃子300円とお手頃価格でした。

庄野真代さんとニューブリードのパーティー仕事だったのですが、小学生の頃、熱唱していた「飛んでイスタンブール」なんか、懐かしくて、あがってしまいました。庄野真代 - 庄野真代ゴールデン☆ベスト: シングル・コレクション & 筒美京平作品集 - 飛んでイスタンブール

前日の夜、Twitter で、つぶやいていたら、本人に拾われて、ステージで暴露されてしまったのには、さすがに恥ずかしかったです…。

  • 明日は宇都宮で民主から出馬の庄野真代さんというタイムリーなパーティーのお仕事なので風呂入って身を清めて寝ます。
    00:38:04
  • 餃子とジャズの街へ出発する。 [mb] 10:00:53
  • 湘南新宿ラインて武蔵小杉止まるのか。知らなかった。 [mb] 10:48:38
  • イマココ L:栃木県宇都宮市竹林町1030 会場着きました。長旅だった。 [mb] 13:12:55
  • ラーメン屋「おぎの」で昼飯。餃子三百円。 [mb] 13:54:32
  • リハーサル終了。めしタイム。 [mb] 17:12:38
  • そろそろ本番。 [mb] 18:23:23
  • お仕事終了。帰り道がまた長いなー。ビール飲んでボチボチとね。 [mb] 20:54:45

Blues for Brother Ray/Jim Rotondi

Blues for Brother Rayimage

レイ・チャールズ特集なオルガンジャズなのでソウルフルなモノかと思いましたが、盟友エリック・アレキサンダーと双頭バンドでジョー・ファンズワースがドラムということで「One For All」的な雰囲気です。マイク・ルドンのオルガンを探してみたら、The Anniversary Quartet の「You’ll See!」で聴いたことがありました。ここのメンツにジム・ロトンディが加わった形ですね。ハードバップ的なアプローチでレイ・チャールズを料理する試みですが、レイの片鱗はテーマのみで、これでいいんかいな?的なジャズでの再構築です。あと全員ソロ回さんでエエよ。たっぷりと各人のソロを聴きたいところです。

正統派 R&B といったノリで「What’d I Say」は、なかなかブルージー。ファンズワースのフィルが笑っちゃうけど。ああ、アレキサンダーは、いつもと同じなのねと気付く1曲目。
「Baby, It’s Cold Outside」はフリューゲルでテナーとコール&レスポンス風。まるでジャズ(笑)。ロトンディも、いつものように炸裂しだして( ̄ー ̄)ニヤリ。各人のソロが、あまりにコンパクトなので、物足りないです。
ルドンのオリジナルの「Brother Ray」は正統派ファンキージャズです。バーンスタインのソロからバピッシュに。既に威風漂うアレキサンダーは圧巻のソロを展開します。みんなワンコーラスで終わっているのでホント物足りないです…。
6/8で「Cry Me A River」をモダンジャズ風にクールに攻めます。もうレイの影も聴き取れないガチのインタープレイ。カッコイイ。ロトンディのリップコントロール、アレキサンダーのアイディアとテクニック。現代ジャズを堪能ですが。やっぱり、短くて物足りないよ。
ジャッフルビートでブルージーに攻める「One Mint Julep」はアレキサンダーとロトンディの解釈の違いが面白いです。モダンなアプローチのアレキサンダーですが、ロトンディのブルースぢからの方に好感を持つのは僕だけでしょうか。
フリューゲルの音色がいい!バラードテンポで「Makin’ Whoopee」を唄い上げる歌心はモダンなフレージングの中にもブルースのDNAをしっかりと感じられます。そしてバカテク…。ファンズワースが引っ込み過ぎかな。
「Lonely Avenue」はストレートに3連系ブルース。結構ブルージーな展開にもかかわらず土臭くならないのが不思議です。
「Georgia On My Mind」は、まさに破壊と再構築のアレンジ。アップテンポでメロディーを細切れにして再び繋げて丸めて揚げたみたいな…。仰け反りました。
  1. What’d I Say
  2. Baby, It’s Cold Outside
  3. Brother Ray
  4. Cry Me A River
  5. One Mint Julep
  6. Makin’ Whoopee
  7. Lonely Avenue
  8. Georgia On My Mind
  • Jim Rotondi(tp)
  • Eric Alexander(ts)
  • Peter Bernstein(g)
  • Mike Ledonne(org)
  • Joe Farnsworth(ds)
  • Rec.2009.
  • Positone Records